鉄分不足による貧血
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知っていますか?鉄分不足による貧血
監修:NTT東日本関東病院顧問 浦部 晶夫先生
貧血とは、血液中に含まれるヘモグロビンの量が減少した状態のこと。ヘモグロビンは、酸素を体のすみずみにまで運搬するという大切な働きをしているため、ヘモグロビンが減少すると全身が酸素不足になり、疲れやすい・めまい・動悸・息切れ・立ちくらみ・頭痛などの症状が現れます。
貧血の90%は、ヘモグロビンの重要な材料のひとつである鉄分が不足することによる鉄欠乏性貧血です。

貧血解消は食生活の改善から
必要な栄養素をバランスよく
貧血を改善するために最も大事なことは、体に必要な栄養素をバランスよくとることです。たんぱく質・糖類・脂質・ミネラル・ビタミンを1日3回の食事にまんべんなく取り入れるようにしましょう。
鉄分を多く含む食品を
鉄欠乏性貧血では、体内の鉄分が不足しています。鉄分の1日必要摂取量成人約10㎎を毎日3回の食事で確実にとりたいものです。鉄には吸収されやすい“ヘム鉄”と吸収されにくい“非ヘム鉄”があり、ヘム鉄は魚や肉に、非ヘム鉄は貝類や野菜に多く含まれています。貧血解消には吸収されやすい“ヘム鉄”を十分とるように心がけましょう。


成人に必要な1日鉄分量約10㎎を含む食品名とその量
食品名 | 量 |
---|---|
鶏レバー | 111g |
鶏もも肉 | 1667g |
豚レバー | 77g |
豚ヒレ肉 | 833g |
牛サーロイン | 1111g |
卵 | 667g |
マグロ(赤身) | 909g |
イワシ | 476g |
イワシ(丸干し) | 227g |
カツオ | 526g |
サンマ | 769g |
食品名 | 量 |
---|---|
アカガイ | 200g |
アサリ | 455g |
アサリ(水煮缶詰) | 33g |
カキ(貝) | 476g |
ひじき(乾燥) | 17g |
あおのり | 13g |
アーモンド | 278g |
ごま | 104g |
ホウレンソウ | 500g |
サラダ菜 | 417g |
サニーレタス | 556g |
鉄の吸収をよくするには
鉄は食品から摂取しても、体内に吸収されるのはほんのわずか。鉄の吸収は男性で1日約1mg、女性で1日約1~2mgです。効率よく鉄を吸収するには…
ヘム鉄を十分に
レバーをはじめとする肉・魚・卵黄などの動物性食品には吸収されやすいヘム鉄が豊富です。これらの食品を積極的にとるようにしましょう。

ビタミンCを組み合わせて
ビタミンCは鉄を吸収しやすい形に変えるすぐれものです。鉄を含む食品にビタミンCを添えたり、一緒に調理したりするなど工夫をしましょう。

動物性たんぱく質も一緒に
動物性たんぱく質にも、鉄の吸収を助ける働きがあります。鉄を含む食品に組み合わせて調理してみましょう。

食事はゆっくりよくかんで
胃酸も鉄の吸収には不可欠です。リラックスした気分でよくかんで食べると、胃酸が十分に分泌されて鉄の吸収がよくなります。また、酢・梅干し・かんきつ類などの酸味のある食品も効果的です。

緑茶・紅茶・コーヒーには気をつけて
タンニンが含まれる飲み物は、鉄の吸収を悪くするので、食事の前後はなるべく控えてください。鉄剤を服用する場合には、とくに緑茶やコーヒーなどのタンニン含有物を制限しなくてもかまいません。

貧血を鉄剤でコントロール!
ほとんどの鉄欠乏性貧血は、鉄剤で鉄を補給することによって改善できます。 鉄剤で貧血をコントロールするには…
食事療法も続けることが大切!
鉄剤だけに頼らずに、食生活にも十分に気を遣いながら服用するようにしましょう。

胃腸症状が現れたら…
鉄剤は、連用すると鉄が胃腸の粘膜を刺激するため、吐き気・むかつき・下痢などの胃腸障害を起こすことがあります。
錠剤が飲みにくいときは、注射剤で鉄を補給することもできるため、症状が現れた場合はすぐに主治医に相談してください。

飲み続けて”鉄”の蓄えを
貧血の症状が改善されても、鉄剤はしばらく飲み続けて体内に鉄を蓄えることが大切です。
ご自分の判断で服用をやめたり、服用量を減らしたりしないようにしましょう。

脱貧血!−年代別アドバイス−
鉄欠乏性貧血の原因は、月経・妊娠・胃腸の機能低下などさまざま。年代別に原因と貧血改善のポイントをしっかりおさえておきましょう。
思春期
思春期には、成長と月経の開始により貧血傾向になることが多く、美容のためのダイエットが貧血の原因になることも…。この時期、貧血を予防・改善するには、たんぱく質・ビタミン・ミネラルを十分にとり、バランスのよい食事を心がけて、鉄分不足を解消することが大切です。

成人女性
成人女性では、全体の約20%が貧血、半分近くの方が潜在性鉄欠乏の状態に…。
ダイエットや外食ばかりの偏った食事は、貧血を助長するもとです。1日20種類以上の食品からバランスよく栄養をとるように心がけましょう。

妊婦
妊娠すると母体の血液量が増え、造血機能がフル回転しますが、造血に必要なたんぱく質・鉄・ビタミンなどの栄養素が不足ぎみになると貧血を引き起こすことも。妊婦の貧血は、流産・早産・妊娠中毒症の原因ともなり、また、胎児に影響がでてくることも…。造血効果の高い動物性食品をたくさんとるなど、食事を工夫しましょう。

高齢者
高齢者では、胃の粘膜が萎縮して、鉄の吸収が悪くなります。
また、動物性食品を好まなくなったり、調理を十分にできなくなったりして、偏った食事になりがち…。
鉄の吸収を良くする食品の組み合わせを考え、市販のお惣菜なども利用して、バランスのよい食事をとるようにしましょう。
